雑木に命を吹き込む
2017.12.04
約30年間、湘南・伊豆半島周辺の雑木を使って彫刻をしています。
雑木は、ねじれ、枝分かれ、割れなど木材としての価値がほとんど無い物です。
使う雑木は、開発で切り倒されたり、台風などで倒れた樹木です。
美化センターで、チップにされ廃棄処分になる運命です。
しかし、捨てるにはあまりにも勿体無い。薪にするのも勿体無い。この木を、どうにかしたい。
自然の樹木は、そのままで美しいのですが、制作者として、そこで喜んでいる訳には行きません。その美しい樹勢を活かしつつ、自分の形にして行くのが作家の使命だと思います。
斯くして、出来上がった作品を観る時、雑木林を吹き抜ける風や行き交う鳥が目に浮かんできます。
訓練と自然美の融合
綺麗な象(カタチ)を取るために、日々人物デッサンなどの練習をしています。
この30年の基礎訓練を熟した目と手で、紙に、作品のエスキースをします。
流線型でもなく、放物線でもなく、何かを象った(象る=カタドル)線を心がけています。
目を瞑って、触って感じる形ではありません。
そうして、いざ、丸太に向かうと、雑木の限られた大きさや捻れた形に、エスキースの形が上手く入りません。
木の形に合わせながらどうにか、自分の引いた線を描きます。
自分の拙い形を、自然の樹勢が、直してくれるのです。
自然の美と作家の目の競作の結実です。